- 初めて国際学会に参加する大学院生・若手研究者の方
国際学会。学生や初期キャリアの研究者にとって、大きな舞台での発表や参加者との交流により研究生活のターニングポイントにもなりうる、貴重な機会ですが、慣れない海外での発表ということで不安も大きいのが現実です。
本記事では、研究発表面以外の「渡航面」での必要な準備について、筆者自身の試行錯誤の結果得られた知見をもとに解説します。
「はじめて国際学会に行くときに教えてほしかった…!」という情報を網羅的に、とてもお節介に書き下しました。このマニュアルをみていただき、研究発表に最大限集中していただくことができれば幸いです。
末尾には本記事で紹介する便利な外部サイトへの「リンク集」を用意していますので、併せてご利用ください!
- 筆者は国際学会や研究のため年平均2回ほど海外渡航している現役の博士課程学生です。
- 本記事は研究室内で初めて国際学会に行く後輩向けに作成・共有していた文書を加筆・修正したものです。
投稿直後
航空券・ホテルを予約する

投稿がリジェクトされる心配がほぼないのであれば、可及的速やかに航空券とホテルを予約しましょう。
※査読の有無や学会の性質にもよりますので、よく知っている先生や先輩方に確認してください。
近年は円安や燃料費の高騰により、航空券もホテルも大変高価になっています。早く予約して費用を抑えましょう。筆者の経験上、ヨーロッパやアメリカに1週間行くだけでも、航空券とホテルあわせて30万円は優に超える金額がかかります。とりわけ日本や現地のホリデーシーズンと重なると大変値上がりし、簡単に予算オーバーしてしまうことになります。
大きな国際学会では数万人単位の人が開催都市に集中し飛行機・ホテルの需要をひっ迫しますので、この観点からも早めの予約が重要です。同行する仲間がいる場合は、ホテルはルームシェア+割り勘がおススメです。
ホテルは大きな国際学会の場合は公式サイトなどで会場周辺のホテルを予約することが可能です。
航空券を探す際は【トラベリスト】がおススメです。LCCを含めた格安航空券を一括検索できるだけでなく、PayPayポイントや楽天ポイントが貯まります。
注意点として、初日午前の会場入り口は大変込み合い、受付に並んで午前中を潰してしまうという場合もあります。予算や出張申請の制度上可能であれば、開催初日の1日前に到着してその日に会場で受付する、もしくは翌朝早く会場に到着できるよう、早めに出発することをおすすめします。
渡航費の支援制度に申請する
大きな学会であれば学生やEarly Carrer Scientistに対する渡航費支援制度が用意されていることも少なくありません。必ず申請しましょう。英語での申請書書きの練習にもなります。
ただ、欧米の学会ではアメリカ国内やEU圏内での移動を想定した金額が設定されていることもあり、全額を賄えません。しかしそれでも、使えるものはすべて使う方がよいでしょう。
※通常のアブストラクト〆切よりも早く投稿する必要がある場合もあります。ルールには十分注意してください。
発表賞にエントリー
大きな国際学会であれば、OSPA (Outstanding Student Presentation Awards) などという名前で発表賞が用意されていることが多いです。
- プレゼン内容
- 質疑応答への対応
- ポスターやスライドのデザイン
など様々な観点から、良いところも改善ポイントも詳しくフィードバックしてくれるので、OSPAを取れなくてもエントリーする価値があります。もちろんもしOSPAを取れたら、それは大きな実績になります。とにかく、ほぼほぼ損しない制度ですので必ずエントリーしましょう。
エントリーのタイミングは早くて投稿時、遅くても投稿アクセプト後、開催よりも早めに締め切られることが多いです。膨大な数の発表に対して審査員の先生方を割り当てる時間が必要なのでしょう。
筆者が2回参加したアメリカの学会では、世界中から集まった多数の先生方のうちランダムで3名がプレゼンを採点してくれました。

もう一つ重要な点は、審査員の先生方は確実に発表を聞きに来てくれるということです。
とくに規模が大きな国際学会では、口頭発表ならまだしも膨大な数のポスターの中から自分のポスターを見つけてもらうことが困難になります。さらに国内と異なり友人などのツテが乏しいことが多く、ポスターに誰も来てくれない、という悲しい結末もあり得ます。
審査員でも友だちでも誰でも良いのですが、予め仕込んでおいた聴衆の存在が重要です。誰かがポスターを聞いていれば、周りの人も便乗して見に来てくれる可能性が高まります。
投稿アクセプト後~出発まで
めでたく投稿がアクセプトされ、渡航が決まったら、いよいよ本格的に渡航手続きです。
渡航手続き・学内編
大学や所属機関によって海外渡航届の提出により渡航先の情報や連絡手段について事前報告が求められる場合があります。
同時に、下記で説明する海外旅行保険には大学や所属機関から最低条件が設定されている場合
- 例:治療・救援費用が無制限かつ最も安価なプランを選ぶ、など
があります。初めての場合はこういった要件について早めに事務方へ確認しましょう。直前になると間に合わない可能性もあります。
※日本学術振興会特別研究員の方は、1回に28日以上の長期の海外渡航となる場合は帰国後に海外渡航届の提出が必要です。国際学会のみで長期間になることはほとんどないと思われますが、フィールド調査や現地研究室滞在などと組み合わせて長期渡航される場合はご留意ください。(参考)
渡航手続き・学外編
学外の渡航手続きで最重要なのはパスポートの取得(更新)と現地入国の手続きです。
パスポートの期限に注意
パスポートの期限は帰国予定日の半年以上先になっていると安心です。国によっては余裕が少ないと入国許可が下りない場合があります。
現地入国の手続き
日本のパスポートは大変powerfulなのでほとんどの国でビザなしの短期渡航が可能ですが、中でも
- 米国
- カナダ
- オーストラリア
- イギリス
- 台湾
- 韓国
- インド
などの国では電子渡航認証システムによる事前の渡航申請が必要です(ただし国によって条件が異なります)。
多くの場合、出発の72時間前までなど余裕をもって認証が完了することが必要とされています。直前では間に合わない可能性がありますので、渡航日程が決まった時点でなるべく早めに申請しましょう。
◆注意点として、例えばアメリカの電子渡航認証システム”ESTA”には、政府公式のサイトと似たような代理店サイトが多数存在しており、手数料を取られてしまう場合があります。政府公式のサイトから申請しましょう。
ビザが必要な国の学会に参加する場合はその国の在日大使館へ行き、余裕をもって申請してください。
【推奨】外務省たびレジ登録
「たびレジ」は外務省が提供する渡航安全情報サービスで、
- 現地の重大事件・事故等の通知
- 現地交通機関のストライキ等の通知
- 現地で事件・事故に巻き込まれた際の支援
をしてくれます。必須ではないですが、より安全・確実に日程を進めるため、登録を推奨します。

海外旅行保険に加入
出張でも旅行でも海外に行く際に必須なのが「海外旅行保険」です。プランにより異なりますが、
- 病気やケガ
- 賠償責任
- 飛行機の遅延による延泊
- 空港で預けた手荷物が行方不明になる(ロストバゲージ)
などのリスクに対応しています。必ず申し込みましょう。所属機関でプランや要件が指定されている場合もありますので、事前に確認してください。
筆者も、学会終了後にアメリカ国内で飛行機が遅延して日本行きの便への乗り継ぎが間に合わず、空港周辺のホテルに延泊し、海外旅行保険にその分の宿泊費を請求したことがありました。
現地参加登録(レジストレーション)
国内学会と同じく、投稿とは別に参加登録が必要です。
Early-Bird Registrationといって早期登録で割引になることがありますので、ぜひ早めに登録しましょう。
出発直前
ポスターの持ち運び
発表形式がポスターになった場合、ポスターの持ち運びが少々厄介です。国内学会でも持ち運びの手間はありますが、必ず飛行機移動を伴うこと・ロストバゲージのリスクが国内より高いことなどが主な理由です。
方法としては
- 紙ではなく防炎クロスなど布の生地に印刷し、やさしく畳んでキャリーケースに入れる
- 紙に印刷して通常の入れ物(筒)に入れ、預入手荷物に含める
主にこの辺りになるかと思います。
筆者は1.をおすすめします。A0サイズのポスターは丸めても機内持ち込みが不可能な場合がほとんどで預け入れが必要です。防炎クロスは印刷費用自体は割高ですが、預入手荷物が増える方が割高な傾向にあると感じます。
指導教員から教わったのですが、筆者はいつも防炎クロスに印刷してキャリーケースに含め、現地ホテルでしばらくポスターを広げておきます。畳んだ折り目は徐々に回復し、綺麗な状態で発表を迎えられます。
渡航関連書類を印刷
入国審査をスムーズに通過できるよう、
- 学会からのInvitationや投稿アクセプトメール
- 電子渡航認証の「審査通過」を表示した画面
を印刷しておきましょう。とくに学会からの連絡は入国審査官に提示することで渡航目的を具体的かつ確実に証明できるpowerfulなツールです。
また万が一の場合に備えて、
- 海外旅行保険の被保険者証
も印刷しておきましょう。これを病院で提示すれば、現地で金銭を払わずに診療を受けることができます。さらに周到に用意するならば、滞在する都市で自分が加盟した海外旅行保険が適用される病院まで調べておくと安心です。
これらの書類はスマホでも提示ができれば問題ないかもしれませんが、当サイトでは印刷してパスポートとともに携帯することを推奨します。スマホの充電や回線状況等に左右されない確実な方法だからです。
eSIMを購入する
海外で国際ローミングを利用すると高額料金が請求されてしまいます。
日本にいる間に現地用のeSIMを購入しておきましょう。物理SIMカードやレンタルWi-Fiの場合は紛失の心配や持参の手間がかかってしまいますので、当サイトでは断トツでeSIMをおススメしています。
当サイトでは機能を絞った高コスパなeSIM VOYAGEESIM をおススメしています。
日本のプライム上場企業が運営する海外eSIMで、eSIMが初めての方でも、
- 365日、日本語でサポートが受けられる
- 日本のプライム上場企業が運営
ということで、安心して利用できます。筆者も台湾で利用しましたが、問題なく利用できました。
対象国ごとに商品が分かれており、 韓国/台湾/中国/ヨーロッパ42か国/アメリカ・カナダ/ベトナム/タイ・シンガポール・マレーシア/フィリピン/インドネシア/オーストラリア・ニュージーランド/香港・マカオ と幅広いです。※2024.10.16時点
※対応国・エリアごとに商品が異なり、それにより仕様も異なる場合がありますので必ずご自身でサイトをご確認ください。
なおeSIMの利用時、下記には十分注意してください。
- 自分のスマホがeSIM対応かどうか確認する
- 自分のスマホのSIMロックを解除しておく
※なお、ahamoを契約中の方は手続きが一切必要ありません。15日以内・30GB以内であれば、手続きなし・追加料金なしで海外ローミングが可能です。
持ち物をそろえる
必須ではありませんが、持っていくとよいものをご紹介します。筆者の個人的な重要度順に…
- 2枚目のクレジットカード※:円安と物価高のダブルパンチで、クレジットカードの上限金額を軽々突破するかも
- 現地通貨の現金:ほとんどの支払いがクレジットカードとはいえ、筆者は10,000円分くらいは用意します
- 水筒:空港や学会会場になる会議場等ではrefillが当たり前、なおかつ水も購入すると高いため
- ビーチサンダル:
国によりますが平気で風呂が汚く、日本人の感覚では気持ち悪いためサンダルを履いてシャワーを浴びる - 使い捨てスリッパ:ホテルや飛行機内で下靴を脱ぎたい方は必須です
- AirTagなど荷物追跡タグ※※:預入手荷物がどこにあるか追跡できて安心です
- インスタント食品:味噌汁やカップ麺などがあると、食費を抑えられるうえに安心・安全
- 紙コップ:テイクアウトして仲間と飲み食いするときに重宝する
- 爪切り:1週間もすると爪は伸びてきます
※2枚目のカードにはEPOSカードがおススメです。
- 海外旅行保険が付帯
- 入会費・年会費は永年無料
- 上限金額を一時的に増額可能
- 紛失・盗難時の不正利用を全額補償
- Visaのタッチ決済・Apple Payが利用可能
- 海外でのトラブル時、日本語サポートデスクが24時間利用可能
などなど、海外渡航にうれしいポイントが揃っています。それ以外にも便利な機能・サービスが充実しているので、公式サイトをぜひご覧ください。

※※手荷物追跡のためのタグはAnkerの「Eufy (ユーフィ) Security SmartTrack」がおススメです。AppleのAirTagも便利ですが、1個約5,000円と高価です。Eufy Security SmartTrackはAirTagと仕組みが異なりますが、iPhoneの「探す」アプリに対応していて1個あたり2,000円台で購入可能。カードタイプもあります。
渡航中
航空券原本を大切に保管する

大学や研究機関では、出張費の申請・支出には航空券の原本提出が必要な場合が少なくありません。乗り終わったからと捨てずに、研究室まで大切に持ち帰りましょう。
搭乗証明書でも代替可能な場合がありますが、たとえばJALやANAのサイトを確認すると「郵送対応のみ」とされています。手間と時間がかかってしまいます。
Uberでホテルへ
これは学会だけに限らない一般的な方法ですが、現地空港到着後は荷物も多いので
などのライドシェアサービスでの移動をおススメします。

ライドシェアとは、タクシー業者ではない一般のドライバーが自分の車を使って客を送り届けるサービスのことです。※日本ではUber Eatsが有名ですが、もともとUberはアメリカでライドシェア配車サービスとして創業・発展したものです。
本サイトではタクシーの利用はおススメしていません。使うなら断然ライドシェアです。タクシーは金額設定が不透明で、国によっては危険なタクシーも存在します。
ライドシェアサービスであれば、
- アプリで車を呼ぶ際、目的地までのルートと金額があらかじめわかる
- ユーザーレビューが低い運転手は営業できない
- 領収書発行もアプリやWEBサイト等からスムーズに可能
という仕組みにより比較的安全かつ便利に利用できるようになっています。
アプリからアカウント作成と支払い情報の登録が必要で、この際、SMS受信による認証が必要となります。現地で通話機能のないSIMを利用する際は、日本にいる間に日本の電話番号で認証を済ませましょう。
公共交通利用時のポイント
こちらも学会によらずですが、毎移動Uberを使うにはお金がかかりすぎますので、荷物が少ないときはバスや鉄道も活用すべきでしょう。
都市や国によっては公共交通の公式アプリが提供されている場合があり、支払いや経路検索が便利にできることが多いです。渡航先のものを探してみましょう。

一方、国によって異なりますが、例えばアメリカなどの大都市の地下鉄では治安が悪いこともあり、注意が必要です。
- できる限り複数人で乗る
- 運転手や車掌などの乗務員が乗っている車両に乗る
- 深夜や早朝の利用時はとくに警戒する
といった対策が重要です。
危険なエリアに近づかない
大きな都市の中心部では、近づくと危険なエリアが存在します。都市ごとにネットや書籍に情報がありますので、必ず確認して避けるようにしてください。
さらに、外務省の海外安全ホームページでは、国や地域ごとに最新の危険情報・感染症情報が提供されています。同様の情報はたびレジでも得られます。

その他のTips
- 歩きスマホをしない。無警戒と思われて襲われます。
- 水道水は飲めない。スーパーやドラッグストアなどでデカイ水を買ってホテルに置いておくと便利です。
- トコジラミに注意する。刺されると地獄の痒さです。以下を確実に実行してください。
- ホテルに入ったらまずベッドのシーツを全部めくってマットレスが汚染されていないか確かめる。
- スーツケースは地面に置かずに、椅子や台の上などに置く。トコジラミを自宅に持ち帰ると二倍地獄です。ヤツらはつるつるした表面を上ることができませんので必ず浮かせてください。
帰国時
研究室に戻るまでが国際学会です。最後までご安全に。
Visit Japan Webに登録
「Visit Japan Web」はデジタル庁が開発・提供している税関申告のためのサービスです。
従来からのカードに手書きで入力する必要はありません。検疫や所持品等について、あらかじめフォームに回答しておくことで、到着後は荷物受け取り後にQRコードを機械にかざしてスムーズに税関申告を進められます。
海外から国内への乗り継ぎの際の注意
航空会社や経由地にもよりますが、日本到着時に国際線→国内線へ乗り継ぐ際、一度預け入れ手荷物をピックアップして再度預けなおす必要がある場合があります。
出発地での預け入れの際、どこまで預けられるかを確認し、必要ならば確実にピックアップしましょう。
例えば羽田空港ではANAやJALが、国際線ターミナル内にて再度の預けなおし用に「国内線乗り継ぎカウンター」を設置しています。
まとめ
以上、国際学会参加のためのマニュアルをお届けしました。
細かい点も多いし、一般的な海外旅行に通じる点も多いですが、筆者自身の経験に基づいてできるだけ良い出張にできるよう書かさせていただきました。
ぜひとも有意義な国際学会をお過ごし下さい!
お気づきの点がありましたら、ページ下部のコメントにてお伝えいただけますと幸いです。
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リンク集
米国ESTA(似たような代理店サイトが多いので公式からの申請がおススメ)
Visit Japan Web(現地出発までに入力してスムーズに帰国!)

外務省たびレジ

外務省 海外安全ホームページ

ライドシェアアプリ
Uber(全世界)
Bolt(主にヨーロッパ)

Lyft(主にアメリカ)

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